【契約や支払いも】注文住宅での住宅ローンを組む流れは?
注文住宅の住宅ローンは、建売とは異なり土地購入や着工金の支払いなど、複数のタイミングでお金が必要になります。流れを把握しておかないと、資金繰りに困ることも。
この記事では、注文住宅における住宅ローンの流れを、事前審査から融資実行まで時系列でわかりやすく解説します。必要書類や審査のポイントも押さえて、スムーズな家づくりを実現しましょう。
1. 注文住宅の住宅ローンと建売の違いとは
建売は1回、注文住宅は複数回の支払いが発生
建売住宅と注文住宅では、住宅ローンの組み方や支払いのタイミングが大きく異なります。
建売住宅の場合、すでに完成している物件を購入するため、支払いは基本的に1回です。売買契約を結び、住宅ローンの審査を経て、引き渡し時に融資が実行されます。手続きがシンプルで、資金の流れも分かりやすいのが特徴です。
一方、注文住宅では土地の購入と建物の建築が別々に進みます。そのため、支払いのタイミングが複数回に分かれるのが一般的です。
まず土地を購入する際に、土地代金の支払いが発生します。その後、建物の工事が始まると、着工時に「着工金」として建築費用の一部を支払います。さらに工事の途中で「中間金」、完成時に「最終金」という形で、建築費用を分割して支払うケースが多いです。
つまり、土地代金・着工金・中間金・最終金と、少なくとも4回の大きな支払いが必要になります。この違いを理解しておかないと、「いつお金を用意すればいいのか分からない」という事態に陥ってしまいます。
つなぎ融資が必要になるケースが多い
注文住宅で複数回の支払いが発生することは分かりましたが、ここで問題が生じます。住宅ローンの融資実行は、基本的に建物が完成して引き渡しを受けるタイミングです。つまり、土地代金や着工金・中間金を支払う時点では、まだ住宅ローンは実行されていません。
それでは、これらの費用はどうやって支払うのでしょうか。ここで登場するのが「つなぎ融資」です。
つなぎ融資とは、住宅ローンの融資実行前に必要な資金を一時的に借りる短期の融資です。土地代金や着工金、中間金をつなぎ融資で支払い、建物が完成して住宅ローンが実行されたタイミングで、つなぎ融資を一括返済します。
つなぎ融資は住宅ローンよりも金利が高く、年2〜4%程度が相場です。借入期間は数カ月と短いものの、借入額が大きいため利息も相応にかかります。また、事務手数料などの諸費用も別途発生します。
すべての金融機関がつなぎ融資を取り扱っているわけではないため、住宅ローンを選ぶ際には「つなぎ融資が利用できるか」も確認しておくことが重要です。
なお、土地を自己資金で購入できる場合や、すでに土地を所有している場合は、つなぎ融資の必要性が減るため、利息負担を抑えられます。
審査のタイミングが早めになる理由
注文住宅では、建売住宅と比べて住宅ローンの審査を早めに受ける必要があります。その理由は、土地購入や建築会社との契約を進めるために、借入可能額を早い段階で把握しておく必要があるからです。
建売住宅の場合、物件価格が明確なので、その金額に応じて住宅ローンを組めばよいだけです。しかし注文住宅では、土地代金と建築費用を合わせた総額が予算になります。借入可能額が分からないままでは、どのくらいの土地を購入でき、どの程度の建物を建てられるのか判断できません。
そのため、注文住宅では土地探しや住宅会社選びと並行して、住宅ローンの事前審査(仮審査)を受けるのが一般的です。事前審査で「いくらまで借りられるか」の目安が分かれば、予算の上限が明確になり、土地や建物の検討をスムーズに進められます。
事前審査は、本審査よりも簡易的な審査で、結果が出るまでに3日〜1週間程度です。複数の金融機関に申し込むこともできるため、金利や条件を比較しながら最適な住宅ローンを選べます。
建売住宅と比べて時間的な余裕が少ない注文住宅だからこそ、早めに審査を受けて資金計画を立てることが、成功する家づくりの第一歩です。
2. 注文住宅で住宅ローンを組む流れ【全体像】
土地探しから入居までの期間は約1年~1年半
注文住宅を建てる場合、土地探しから入居まで、どのくらいの期間がかかるのでしょうか。一般的には、約1年〜1年半が目安とされています。
具体的なスケジュールは以下のような流れになります。
・土地探し・住宅会社選び(2〜3カ月)
希望する立地やエリアで土地を探し、並行して住宅会社を比較検討します。
・土地購入・設計打ち合わせ(3〜4カ月)
土地が決まったら売買契約を結び、住宅会社と間取りや仕様を詰めていきます。
・建築確認申請・工事請負契約(1〜2カ月)
設計が固まったら工事請負契約を結び、建築確認申請を行います。
・建築工事(4〜6カ月)
基礎工事から始まり、上棟、内装工事と進み、建物が完成します。
・引き渡し・入居(1カ月)
完成検査を経て引き渡しを受け、引っ越しの準備を整えて入居します。
もちろん、土地が見つかるまでに時間がかかったり、設計変更が生じたりすれば、さらに期間は延びます。余裕を持ったスケジュールを立てておくことが大切です。
住宅ローン手続きの主な5ステップ
注文住宅における住宅ローンの手続きは、大きく5つのステップに分けられます。
ステップ1:事前審査(仮審査)
土地探しや住宅会社選びと並行して、複数の金融機関に事前審査を申し込みます。借入可能額の目安を知ることで、総予算が明確になります。
ステップ2:本審査
土地の契約と建物の工事請負契約が済んだ段階で、本審査を申し込みます。事前審査よりも詳細な審査が行われ、結果が出るまでに1〜2週間程度かかります。
ステップ3:金銭消費貸借契約(金消契約)
本審査に通過したら、金融機関と正式な借入契約を結びます。借入額、金利、返済期間などが確定します。
ステップ4:つなぎ融資の実行
土地代金、着工金、中間金の支払いに合わせて、つなぎ融資を実行してもらいます。
ステップ5:住宅ローンの融資実行
建物が完成し引き渡しを受けるタイミングで、住宅ローンが実行されます。つなぎ融資を利用していた場合は、ここで一括返済します。
この5つのステップを理解しておけば、「今どの段階で、何をすべきか」が明確になります。
建築会社選びと並行して進める重要性
住宅ローンの手続きは、建築会社選びと並行して進めることが重要です。その理由は、建築会社との契約内容が住宅ローンの審査に影響するからです。
住宅ローンの本審査では、建物の設計図や工事請負契約書の提出が求められます。つまり、建築会社と正式に契約していないと、本審査を受けられません。
また、建築会社によっては提携している金融機関があり、スムーズに審査を進められるケースもあります。住宅ローンの相談から審査書類の準備まで、サポートしてくれる会社もあるため、建築会社選びの段階で「住宅ローンのサポート体制はどうか」を確認しておくとよいでしょう。
さらに、建築会社との打ち合わせで建築費用が確定しないと、正確な借入額も決められません。設計の変更や追加工事が生じれば、借入額の見直しが必要になることもあります。
このように、住宅ローンと建築会社選びは密接に関係しています。両方をバランスよく進めることで、資金面での不安を減らし、理想の家づくりを実現できます。
3. 【ステップ1】事前審査の申し込みと準備
事前審査を受けるタイミングはいつ?
事前審査は、土地探しや住宅会社選びを始める段階で受けるのが理想的です。借入可能額が分からないままでは、予算の上限が定まらず、土地や建物の検討が進められません。
たとえば「3000万円まで借りられる」と分かっていれば、自己資金と合わせて総予算が決まります。土地に1500万円、建物に2000万円、諸費用に500万円といった具体的な配分も可能になります。
事前審査は複数の金融機関に申し込めるため、金利や条件を比較しながら選べます。インターネットで申し込める金融機関も増えており、自宅にいながら手続きを進められます。
審査結果は通常3日〜1週間程度で出ます。早めに受けておけば、土地が見つかったときにすぐ動けるため、希望の土地を逃すリスクも減らせます。
事前審査で必要な書類一覧
事前審査で必要になる主な書類は以下の通りです。
◎本人確認書類
・運転免許証やマイナンバーカードなど
◎収入を証明する書類
・会社員:源泉徴収票(直近1〜2年分)
・自営業:確定申告書(直近2〜3年分)、課税証明書
◎物件に関する書類
・土地の概要書や地図
・建物のプランや見積書(仮のものでも可)
◎他の借入に関する書類
・自動車ローンやカードローンの返済予定表
・クレジットカードの利用明細
自営業の方や、勤続年数が短い方は、追加で書類を求められることもあります。金融機関によって必要書類が異なる場合もあるため、事前に確認しておくとスムーズです。
事前審査の段階では、まだ土地や建物が確定していなくても申し込めます。「このくらいの予算で考えています」という概算で審査してもらえるため、気軽に申し込んでみましょう。
審査で見られる主なポイント
住宅ローンの審査では、返済能力や信用情報など、さまざまな項目が確認されます。主なポイントは以下の通りです。
・年収と返済負担率
年収に対する年間返済額の割合が「返済負担率」です。一般的には25〜35%以内が目安とされます。他の借入(自動車ローンなど)も含めて計算されるため、既存の借入がある場合は注意が必要です。
・勤続年数と雇用形態
勤続年数が長いほど、安定した収入があると判断されます。一般的には3年以上が望ましいとされますが、1年未満でも審査に通るケースはあります。正社員が有利ですが、契約社員や自営業の方も借入可能です。
・健康状態
多くの住宅ローンでは、団体信用生命保険(団信)への加入が条件です。健康状態に不安がある場合は、「ワイド団信」を取り扱う金融機関を検討しましょう。
・信用情報
過去にクレジットカードやローンの返済で延滞があると、審査に不利に働きます。心配な方は、信用情報機関に開示請求をして、事前に確認することもできます。
・物件の担保価値
土地と建物の評価額も審査で確認されます。立地条件が悪い土地や、市場価値の低い建物は審査に影響することがあります。
これらのポイントを押さえて、審査に備えましょう。
4. 【ステップ2】本審査の申し込みと契約
本審査のタイミングは工事請負契約後
本審査を申し込むタイミングは、土地の売買契約と建物の工事請負契約が済んだ後です。事前審査では概算で審査してもらえましたが、本審査では具体的な物件情報が必要になります。
建物の設計図や工事請負契約書、土地の登記事項証明書など、詳細な書類を提出して審査を受けます。金融機関は、物件の担保価値や建築計画の妥当性を確認した上で、融資の可否を判断します。
工事請負契約を結ぶ前に本審査を受けることはできないため、建築会社との打ち合わせをしっかり進めておくことが重要です。設計変更が生じれば、本審査のやり直しが必要になる場合もあります。
本審査で追加提出が必要な書類
本審査では、事前審査よりも多くの書類が必要です。
◎収入に関する書類
・源泉徴収票や確定申告書(直近2〜3年分)
・課税証明書
・勤務先の情報(会社名、所在地、電話番号など)
◎物件に関する書類
・土地の登記事項証明書、公図、地積測量図
・建物の建築確認済証、設計図書、工事請負契約書
・建築会社のパンフレットや会社情報
◎本人確認書類
・運転免許証、マイナンバーカード、健康保険証など
◎返済用口座の書類
・通帳やキャッシュカードのコピー
金融機関によって必要書類が異なるため、事前にリストをもらって準備しましょう。書類に不備があると審査が遅れるため、早めに揃えておくことが大切です。
審査期間と承認までの流れ
本審査の結果が出るまでには、1〜2週間程度かかります。この期間中に、金融機関は提出書類をもとに詳細な審査を行います。
審査の途中で追加書類の提出を求められることもあるため、金融機関からの連絡には迅速に対応しましょう。対応が遅れると、審査期間が延びてしまいます。
本審査に通過すると、金融機関から「承認通知」が届きます。これで正式に融資が決定し、次のステップである金銭消費貸借契約に進めます。
万が一、本審査に通らなかった場合は、他の金融機関に申し込むか、借入額を減らして再度申し込む必要があります。事前審査に通っても本審査で落ちることはあるため、油断は禁物です。
5. 【ステップ3】金融機関との契約(金銭消費貸借契約)
金銭消費貸借契約で決める主な内容
本審査に通過したら、金融機関と金銭消費貸借契約(通称「金消契約」)を結びます。この契約によって、住宅ローンの借入が正式に決定します。
金消契約で決める主な内容は以下の通りです。
・借入金額
土地代金と建築費用を合わせた総額、または建物のみの金額など、実際に借りる金額を確定します。
・金利タイプ
変動金利、固定金利、固定金利選択型のいずれかを選びます。契約後の変更は難しいため、慎重に選びましょう。
・返済期間
現在はご年齢によっては50年ローンも利用できます。返済期間が長いほど月々の返済額は減りますが、総返済額は増えます。
・返済方法
元利均等返済(毎月の返済額が一定)または元金均等返済(元金部分が一定)を選びます。また、ボーナス併用払いにするかどうかも決めます。
・団体信用生命保険の内容
一般的な団信のほか、がん団信や三大疾病保障付き団信など、保障内容を選びます。
契約時には、これらの内容を最終確認し、納得した上で署名・押印します。
契約時に必要な書類と印鑑
金消契約を結ぶ際には、以下の書類と印鑑が必要です。
◎必要な書類
・本人確認書類(運転免許証など)
・実印
・印鑑証明書(発行から3カ月以内)
・住民票(発行から3カ月以内)
・収入印紙(借入額に応じた金額)
◎印鑑
金消契約には実印が必要です。契約書に押印するため、事前に印鑑登録を済ませておきましょう。
契約は金融機関の店舗で行われるのが一般的です。所要時間は1〜2時間程度で、契約内容の説明を受けた後、署名・押印します。
夫婦で連帯債務や連帯保証にする場合は、配偶者も同席する必要があります。スケジュールを調整して、二人揃って契約に臨みましょう。
団体信用生命保険の加入手続き
金消契約と同時に、団体信用生命保険(団信)の加入手続きも行います。団信は、契約者が死亡または高度障害状態になった際に、住宅ローンの残債が保険金で完済される仕組みです。
一般的な団信は、金利に保険料が含まれているため、別途保険料を支払う必要はありません。ただし、がん団信や三大疾病保障付き団信など、保障範囲が広いタイプは、金利に0.1〜0.3%程度が上乗せされる場合が多いです。
団信に加入するには、健康状態の告知が必要です。持病がある場合でも、「ワイド団信」なら加入できる可能性があります。ワイド団信は通常の団信よりも審査基準が緩やかですが、金利が0.3%程度高くなります。
団信に加入できない場合、住宅ローンを組めない金融機関もあるため、健康面で不安がある方は事前に相談しておきましょう。
6. 【ステップ4】つなぎ融資の実行と建築費用の支払い
つなぎ融資が必要になる3つのタイミング
つなぎ融資は、住宅ローンの融資実行前に必要な資金を一時的に借りるものです。注文住宅では、主に以下の3つのタイミングでつなぎ融資が必要になります。
1. 土地代金の支払い時
土地の引き渡しを受けるタイミングで、土地代金の残金を支払います。このとき、つなぎ融資を実行してもらい、売主に支払います。
2. 着工金の支払い時
建物の工事が始まる際に、着工金として建築費用の約30%を支払います。このタイミングでもつなぎ融資を利用します。
3. 中間金の支払い時
建物の上棟時や工事の途中で、中間金として建築費用の約30%を支払います。ここでも つなぎ融資が必要です。
それぞれのタイミングで、金融機関に融資実行を依頼し、指定された口座に入金してもらいます。その資金を使って、土地の売主や建築会社に支払いを行います。
つなぎ融資の金利と手数料の目安
つなぎ融資の金利は、住宅ローンよりも高めに設定されています。一般的には年2〜4%程度が相場です。
たとえば、2000万円の土地代金を3カ月間つなぎ融資で借りた場合、金利3%とすると利息は約15万円になります。着工金と中間金も含めると、つなぎ融資の利息だけで数十万円かかることもあります。
また、つなぎ融資には事務手数料や印紙代などの諸費用も発生します。金融機関によって異なりますが、合計で10万円前後が目安です。
つなぎ融資の利息負担を減らすには、自己資金を多めに用意して借入額を減らすか、つなぎ融資が不要な「分割融資」に対応している金融機関を選ぶ方法があります。分割融資なら、土地代金や着工金のタイミングで住宅ローンから直接支払えるため、つなぎ融資の金利負担を避けられます。
土地代金・着工金・中間金の支払いスケジュール
注文住宅における支払いスケジュールの一例を紹介します。
◎土地購入時(契約から約1カ月後)
・手付金:土地代金の5〜10%(自己資金)
・残金:土地代金の90〜95%(つなぎ融資)
◎着工時(土地購入から約2〜3カ月後)
・契約金:建築費用の約10%(自己資金またはつなぎ融資)
・着工金:建築費用の約30%(つなぎ融資)
◎上棟時(着工から約2〜3カ月後)
・中間金:建築費用の約30%(つなぎ融資)
◎引き渡し時(着工から約4〜6カ月後)
・最終金:建築費用の約40%(住宅ローン)
・つなぎ融資の一括返済(住宅ローン)
このように、複数のタイミングで大きな金額が動くため、スケジュールをしっかり把握しておくことが重要です。
建築会社によって支払いのタイミングや割合が異なる場合もあるため、工事請負契約を結ぶ際に必ず確認しましょう。
7. 【ステップ5】住宅ローンの融資実行と引き渡し
融資実行は建物完成後の引き渡し時
住宅ローンの融資実行は、建物が完成し、引き渡しを受けるタイミングで行われます。引き渡しの前には、施主による最終検査(竣工検査)を行い、設計通りに建てられているか、不具合がないかを確認します。
検査で問題がなければ、建物の引き渡しを受け、鍵を受け取ります。このタイミングで、建物の登記(表示登記・保存登記)を行い、所有権を正式に自分のものにします。
登記手続きは通常、司法書士に依頼します。登記が完了すると、金融機関は建物に抵当権を設定し、その後住宅ローンが実行されます。
融資金は、つなぎ融資の返済、建築費用の最終金、登記費用などに充てられます。残った金額があれば、指定した口座に入金されます。
つなぎ融資から本融資への切り替え
住宅ローンが実行されると、まずつなぎ融資を一括返済します。土地代金、着工金、中間金として借りていた金額と、その利息をまとめて返済します。
つなぎ融資の返済が完了すると、以降は住宅ローンの返済のみになります。返済は翌月から始まり、毎月一定額を返済していきます。
つなぎ融資の利息は、融資実行から返済までの期間で計算されます。たとえば、土地代金を6カ月前に借りていた場合、その期間の利息がかかります。つなぎ融資の期間が長いほど利息負担も増えるため、工事の進捗を遅らせないことも大切です。
登記手続きと抵当権設定の流れ
住宅ローンを組む際には、建物と土地に「抵当権」を設定します。抵当権とは、万が一返済が滞った場合に、金融機関が物件を売却して融資額を回収できる権利のことです。
登記手続きの流れは以下の通りです。
1. 建物の表示登記
建物が完成したら、土地家屋調査士に依頼して「表示登記」を行います。建物の所在地、構造、床面積などを登記します。
2. 建物の所有権保存登記
表示登記が完了したら、司法書士に依頼して「所有権保存登記」を行います。これで建物の所有者が正式に登記されます
3. 抵当権設定登記
住宅ローンを借りる金融機関が、建物と土地に抵当権を設定します。司法書士が手続きを代行し、法務局に登記申請を行います。
4. 土地の所有権移転登記
土地を購入した場合は、売主から買主へ所有権を移転する登記も必要です。これも司法書士が手続きを行います。
登記にかかる費用は、登録免許税と司法書士への報酬を合わせて、30〜50万円程度が目安です。登録免許税は、土地や建物の評価額によって変わります。
登記手続きが完了すると、金融機関から住宅ローンが実行されます。この一連の手続きは、引き渡し当日に同時に進められることが多いです。
8. 注文住宅の住宅ローンで注意すべきポイント
土地と建物を別々のローンで組むリスク
注文住宅では、土地と建物を別々のローンで組む方法もあります。たとえば、土地を先に購入して「土地先行融資」や「土地ローン」を組み、その後建物が完成したら住宅ローンを組むパターンです。
しかし、この方法にはリスクがあります。土地ローンは住宅ローンよりも金利が高く、返済期間も短い場合が多いです。また、土地ローンと住宅ローンの両方で審査を受ける必要があり、手続きが煩雑になります。
さらに、土地ローンを借りている間は、その返済と家賃の二重負担が発生します。建物が完成するまでの数カ月間、家計への負担が大きくなる点も考慮しなければなりません。
可能であれば、土地と建物をまとめて一本の住宅ローンで組み、つなぎ融資を利用する方が、金利面でも手続き面でも有利です。金融機関に相談して、最適な方法を選びましょう。
建築費用の変更が生じた場合の対応
注文住宅では、設計を進める中で「この設備も追加したい」「間取りを変更したい」といった要望が出てくることがあります。その結果、当初の見積もりから建築費用が増えることも珍しくありません。
建築費用が増えると、借入額の見直しが必要になります。すでに本審査を通過している場合でも、金額が大きく変わると再審査が必要になるケースもあります。
特に注意したいのは、本審査後に大幅な変更を加えることです。金融機関は「当初の計画と異なる」と判断し、融資を見直すことがあります。最悪の場合、融資が下りないという事態も考えられます。
設計変更は慎重に行い、どうしても必要な変更であれば、早めに金融機関と建築会社に相談することが大切です。また、予算オーバーを防ぐために、最初の段階で優先順位を明確にしておきましょう。
予算オーバーを防ぐための資金計画のコツ
注文住宅では、理想を追求するうちに予算オーバーになりがちです。予算を守りながら満足のいく家を建てるには、以下のポイントを押さえましょう。
・総予算を最初に決める
土地代、建築費用、諸費用、家具・家電、引っ越し費用まで含めた総予算を設定します。自己資金と住宅ローンの借入可能額を足した金額が上限です。
・優先順位をつける
「絶対に譲れない部分」と「予算に応じて調整できる部分」を家族で話し合います。たとえば「リビングの広さは譲れないが、外壁材はコストを抑えてもいい」といった具合です。
・予備費を確保する
予算の10%程度は予備費として確保しておきます。予期しない追加費用が発生しても対応できます。
・相見積もりを取る
複数の建築会社から見積もりを取り、内容を比較します。同じ仕様でも会社によって価格が異なるため、適正価格を見極められます。
・建築会社との連携を密にする
予算を正直に伝え、その範囲内で最適なプランを提案してもらいます。信頼できる建築会社なら、無理な提案はせず、長期的な視点でアドバイスしてくれます。
9. 住宅ローン選びで押さえておきたい基礎知識
金利タイプの選び方(固定・変動・期間固定)
住宅ローンの金利には、大きく3つのタイプがあります。それぞれの特徴を理解して、自分に合ったタイプを選びましょう。
・変動金利型
金利が半年ごとに見直されるタイプです。金利が低いのが最大のメリットですが、将来的に上昇するリスクがあります。金利が上がると返済額も増えるため、家計に余裕がある方や、繰上返済を計画している方に向いています。
・全期間固定金利型(フラット35など)
借入時の金利が返済終了まで変わらないタイプです。返済額が一定のため、長期的な資金計画が立てやすいのがメリットです。変動金利よりも金利は高めですが、金利上昇のリスクを避けたい方に適しています。
・固定金利選択型
一定期間(3年、5年、10年など)だけ金利を固定し、その後は変動金利に切り替わるか、再度固定期間を選べるタイプです。固定期間中は返済額が変わらず、期間終了後は金利情勢を見て判断できます。
どのタイプが良いかは、家計の状況やリスク許容度によって異なります。「金利上昇が心配」という方は固定金利、「少しでも返済額を抑えたい」という方は変動金利が向いています。
返済期間と月々の返済額のバランス
住宅ローンの返済期間は、一般的に25年〜35年、ご年齢によっては50年で設定します。返済期間が長いほど月々の返済額は少なくなりますが、総返済額は増えます。
たとえば、3000万円を金利1.5%で借りた場合の返済額を比較してみましょう。
◎返済期間25年の場合
・月々の返済額:約12万円
・総返済額:約3,597万円
◎返済期間35年の場合
・月々の返済額:約9.2万円
・総返済額:約3,849万円
◎返済期間50年の場合
・月々の返済額:約7.2万円
・総返済額:約4,266万円
返済期間を10年延ばすと、月々の返済額は約3万円減りますが、総返済額は約250万円増えます。
月々の返済額は、年収の25%以内に抑えるのが理想とされています。たとえば年収600万円なら、年間返済額150万円(月々約12.5万円)が目安です。
ただし、子どもの教育費や老後資金の準備も考慮すると、もう少し余裕を持たせたほうが安心です。無理のない返済計画を立てましょう。
諸費用も含めた総額で比較する重要性
住宅ローンを選ぶ際、金利だけで比較するのは危険です。諸費用も含めた総額で比較することが重要です。
住宅ローンにかかる主な諸費用は以下の通りです。
◎事務手数料
・定率型:借入額の1〜2%程度
・定額型:3〜5万円程度
◎保証料
・一括前払い:借入額の1〜2%程度
・金利上乗せ型:金利に0.2%程度上乗せ
◎団体信用生命保険料
・通常は金利に含まれる
・特約付きは金利に0.1〜0.3%上乗せ
◎印紙代
・借入額に応じて数千円〜数万円
◎登記費用
・登録免許税と司法書士報酬で10〜20万円程度
たとえば、A銀行は金利0.5%で事務手数料が借入額の2%(3000万円なら60万円)、B銀行は金利0.7%で事務手数料が5万円の場合、一見A銀行が有利に見えます。しかし諸費用も含めた総返済額で計算すると、B銀行のほうが安くなることもあります。
金融機関のウェブサイトにあるシミュレーションツールを使えば、総返済額を簡単に比較できます。複数の金融機関を比較して、本当にお得なローンを選びましょう。
10. まとめ:注文住宅の住宅ローンは早めの準備と計画がカギ
注文住宅における住宅ローンは、建売住宅と比べて手続きが複雑で、支払いのタイミングも複数回に分かれます。土地代金、着工金、中間金と、それぞれのタイミングでつなぎ融資を利用する必要があるため、資金の流れをしっかり把握しておくことが大切です。
住宅ローンの流れは、大きく5つのステップに分かれます。事前審査で借入可能額を確認し、本審査で正式な審査を受け、金消契約で借入を確定させます。その後、つなぎ融資で必要な支払いを行い、建物完成時に住宅ローンが実行されます。
注意すべきポイントは、建築費用の変更が生じた場合の対応や、予算オーバーを防ぐための資金計画です。設計変更は慎重に行い、優先順位を明確にしておくことで、理想と予算のバランスを取れます。
住宅ローン選びでは、金利タイプや返済期間だけでなく、諸費用も含めた総額で比較することが重要です。複数の金融機関を検討し、自分に合ったローンを選びましょう。
プラスリッコでは、資金計画の段階から丁寧にサポートし、お客様が安心して家づくりを進められるようお手伝いしています。住宅ローンに関する疑問や不安があれば、遠慮なくご相談ください。提携金融機関のご紹介や、審査書類の準備サポート、つなぎ融資の手配まで、トータルでサポートいたします。
また、プラスリッコでは建物の品質に自信を持っているからこそ、初期保証20年、住宅設備保証10年という長期保証制度を設けています。家を建てた後も、長く安心して暮らしていただけるよう、アフターサポートにも力を入れています。
家づくりは一生に一度の大きなプロジェクトです。住宅ローンの流れを理解し、早めの準備と綿密な計画を立てることで、理想の住まいを実現しましょう。プラスリッコは、あなたの家づくりを全力でサポートします。










